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No.493「冬散歩」

No.493[冬散歩] 年の瀬もとうとうそこまでやってきた。
久々にやってきたココは、相変わらずこの時期は人が多い…
この辺にオフィスがあったのっていつ頃だったっけ?もうだいぶ前のコトだから、正確な日なんか覚えちゃいない。
「ねーねー」
「はいはい」
「この辺って、あれだよね?この間ドラマでやってた舞台…」
恐らくは先日終わった番組のコトを言っている。
この辺も出てたっけ…あっちの桟橋方面はよく映ってたような気がするけど…
「んな、しょっちゅう何でも使ってるわ」
「そ、そうだけど~…」
自分ペースな話題に持っていこうとでも思ってたか?
「あ、ほら、お船お船♪」
「そうですお船です」
「これで港を周れる?」
「…もしもし?」
アナタ、ちゃんとドラマ観てましたか?
「この船は動かん、動くのはあっち」
反対側の遊覧船乗り場を指差す。
「でもみんな入っててるよ?」
「中は見れるんだよ」
「入ったコトあるの?」
「…」
そう言えばこっちで働いてた割に、乗ったコトが無かったのを思い出した。
まぁ、朝の8:30にはオフィスに入り、出るのは23時…毎朝毎晩眺めてはいたが、そんな時間では入れる余裕も無いし、わざわざ休日に仕事場所近くにまでやってくるのも何だし…
んじゃ何故今来てるかと言えば、れっきとした仕事である取材である(えっへん)。
「あ…」
「?」
「見れなくなるんだっけ…」
「え?」
つい最近知った話、今年のクリスマスでこのお船の営業は終了するらしい…
以前は”いつでも来れるさ…”と思ってたのが、いざそうなると、長々と延ばしていたコトが急に悔やまれる。
実は今仕事で調べてる件だって、この船…ちょっと関係してたんだよな…
「ざんねん…」
「あっちの明るい塔も終了…」
「えぇ!?じゃ、だったら尚更見たーい」
「いや…ちと周りを見てくださいな…」
季節のせいもあるし、終了近いのもあるし、ドラマも影響して、周囲はとんでもない人出であった。
折角の電飾も、ケータイのフラッシュに掻き消されっぱなし…
「人ごみは嫌いなのです♪」
「んじゃなんでこんなトコに~…」
尤もである。そーさ、仕事であるさ♪
が、自分の目的の場所はここよりも更に先、だだっぴろい空地に行く予定だ。
今は空地なんだが、以前はジャズ聴いて踊れるトコがあった…そりゃもうスゴイ昔に…
外国航路の船には専属のバンドが乗り込み、あっちの楽譜とか持ってきてたとか…恐らくはいち早くそこで演奏されたんじゃないか?などと勝手な想像の確認をしたい次第である。
だからこの船も実は関係している…かもしれないんだった…
「今から山に登り、お墓を通過し、坂を下ります♪」
「女の子連れて行くようなトコじゃなーい!」
「って、勝手に着いてきたんだろがー」
「はうっ!」
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