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No.0453「廃線鉄道の駅舎」

No.0453[廃線鉄道の駅舎] ”ガサガサ…”
「全く、なんてこったい…」
久々に温泉旅行に出かけた俺、一人旅って訳じゃなく、現地で友達と合流するって流れ…まぁ、俺だけちょっと遠いところから一人参加だからな…
そして、駅を降り、バスに乗り、目的地で降りた…ハズだったんだが、どうも降りる停留所を間違えたらしく、今や雑木林と草むらの中を進行中…
「くそ~、やっぱ夕べは早くに寝て、余裕を持って出てくるんだった…」
今更後悔しても遅かった。この所、生活習慣が乱れに乱れている俺は、明日出かけるってのに、いつもと同じ朝に眠りについてしまった。
案の定出かける時間に起きられず、用意もままならない状態で速攻飛び出してきたのだ。そして、しっかり忘れられていた地図…
記憶頼りに停留所を降りて歩いたのがこのザマだ…
辺りは紅葉で真っ赤に染まってたのかと思ってたら、いつの間にか夕方近くになっていた…
「そうなんですよ…あぁ~」

道なき道をひたすら進んでいた時だ。
「を?」
目の前の高い雑草を掻き分けると、その先は一気に広がった。
小さな小屋…長く続く柵…並ぶ鉄の棒
「…駅…か?」
電車でも捕まえられればどこかには着けるだろうと小屋に近付き、ホームらしき土盛りされたところへ上る。
しかし、俺の思惑は簡単に崩されてしまった。
「廃線か…」
それは列車の通らなくなった誰もいない駅舎、レールと枕木が昔ここを列車が走ってたであろう事を静かに物語っていた。

「電車は来ないよ」
後ろから声が聞えた。
「え?」
振り返ると、いつからそこにいたのか、若い女の子がホームの柵に座っていた。
俺は彼女に近付き、話し掛けた。
「んじゃ聞くが…」
「うん?」
「キミは何を待ってるんだ?」
「さぁ…」
見た感じ、俺と同じような観光客のようだ。
「判った…」
「うん?」
「同じだろう?」
「うん」
「迷子」
「当たり~」
なんてこった、こいつ、俺と同じようにあの獣道を歩いてきたとでもゆーのか?
「昔はこんなんじゃなかったんだけどね」
「何?」
「電車走ってた時は、ちゃんと使われてたんだよ」
「電車が走らなくなったから使われなくなったんだろ?」
「まぁ、そうだね」
迷子と言う割に落ち着いている。いや、昔とか言ってるって事はここのじもぴーか?
「地元か?」
「昔ね、今は違うよ」
「んじゃ、どうしたら道路とか人のいそうなところに出られるか知ってるよな?」
そう聞くと、彼女は立ち上がり、両手でお尻をポンポンと叩く…
「あれ、ほら…」
彼女が俺がやってきた方向と逆を指差す。
「あれが国道」
「何をー!?」
なんと、駅の反対側は国道が走っていた。駅の出入り口から通じているようだ…
「まぁ、じゃ、この駅を出れば国道な訳だな」
「そうだね…」
「んじゃ俺は友達が待ってるんで…」
「あ…」
なんか呼び止めたような感じだったが、俺は既に駅舎の出口に向かってた…そして目の前には車が激しく通る国道が…
「無いじゃん…」
目の前に国道は無い…つーか、出口の下、6m位の所を車が走っている…
「この駅高いところにあるんだよ~昔は階段あったんだけどね…」
「無いぞ」
「国道広げたみたいだから、削られちゃったのかもね」
まぁ、2mか3m位なら降りれるが、直滑降の6mはイタイかもしれん…しかも着地して車にボン、じゃシャレにならん…
”カシャ”
そんな俺の姿をデジカメに収める彼女…
「こら」
「だって面白い顔してたからさ~」
「えぇい!どうしたら降りられるんだ!?そもそも、キミはどこから来たんだ!?」
「線路伝い」
「は?」
「50m位線路進むと、昔の踏み切りのとこがあるの。国道と交差してるよ」
「はぁ~」
「飛び降りる?」
「降りません!」
「あはは、じゃそこまで行こっか、私ももう帰るから」
「へぇ…お願いします…」
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