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No.514「High and High」

No.514[High and High] 高い高い、そして青い青い海と空…
この先が暗黒の宇宙なんてのを忘れさせてくれるような…
「海!」
「まんまその通りですな…」
「晴!」
「まんまその通りですな…」
「…」
「…」
会話が終わってしまった。
「そこでヘバってる人?」
「…あい…」
いやまさか、こんなコトになるとは思わなかった。
海辺の公園へ行こう…と、ゆーよーな話になったまでは良かった。しかし、咄嗟に思い浮かんだ公園は陸地から海底トンネルをくぐった離れ島にあったため、交通手段的にはバス・タクシーしか無く…どっか他にと思ったのだけど、なんでも歩いて行けるトンネルが別にあるとかで…
しかもこの天気でこの陽気だ、このトコロの運動不足解消にもいいのでは?と、歩いて行くコースを選んだ…のが間違い…
「最寄駅から何キロあったんだか…」
「お散歩には良かったと思うよ?」
「景色が良ければな…」
駅からは工場区域の中を通り抜けなければならなかった。しかもトンネルに入っている間は景色なんて壁しか無いじゃないですかい?
「1kmもトンネルの中では景色もへったくれも無いです…」
「でも、この最後はこの景色だよー♪」
確かにこの空と海とを見ていれば、今までの苦労も…
「報われた気はしません…」
「贅沢言ってるねぇ…丁度イイ運動だったじゃないの?」
”ぷにゅ”
「ひあぁぁっ!」
そ、そこでいきなり脇腹を!
「ほらほら、この辺が…♪」
”ぷにゅ”
「や、やめてくれぇ~!」
「少しは減ったんじゃない?」
「こ、こんなんで減るかっ!」
これで減るなら、世の中のダイエットグッズは全て滅亡だ。
”ぶりゅりゅ…”
「ごふっ!」
「あー…ねじれちゃうよ…」
人の下腹を…いや、ねじれてしまうようなモンを持ってる自分にも…
「か、帰りはバスな…」
「えー、減らないじゃない?」
そんな目的を持った覚えは無い!
って、またあのトンネルくぐるおつもりで?運動にはなるにしても、片道にどんだけかかってきたかをお忘れで?
帰りの時間も考慮しないと、トンネルを抜けたら夜…なんてのは却下である。
「ほら、あっちに夜景の見えるトコあるって♪」
夜までねばるおつもり?
ますますトンネル不可じゃないですか?
「そ、そう言うチミはー!」
「わ!」
”すか”
「ななな、何をー!」
「えぇい!貴様の脇腹も確認してくれる!」
”すか”
”ぷにゅ”
「逃げるなー!」
「逃げるに決まってるでしょー!?」
”すか”
”ぷにゅ”
お互いがお互いの間を計りながら脇腹を狙い合う…って、傍から見たらどういう光景だろう?
しかも、突かれてばかりだろ!?俺ー!?
「あー、ほらほら船、船♪」
”すか”
”ぷにゅ”
「魚がいっぱい泳いでるぞ~♪」
”すか”
”ぷにゅ”
幸いだったのは、周囲に人影が無いコト位か?長く長く続く海に面したデッキには俺達2人しかいなかった。
後半、雨続きだった夏、気が付けば秋の気配…
そして、このデッキのように2人の影は長く長く伸びていた…
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