ArtWorks Library
No.0561「校舎の片隅」
卒業式も終わり、静まり返った校舎。毎日の放課後に集まっていた図書室も静かなもんだ。
「今日で最後かぁ…」
何故か2人だけ残っていた、しかし司書の先生も今日は既に居ないため、図書室は施錠されていた。
入り口の図書案内板の下に座り、差し込む日差しに当たっていた。
時折、窓の外を白いモノが風に巻き上げられているのが見える。
「何か舞ってる…桜かな?」
「まだ早い」
「梅?」
「にしては色が濃いな…」
「河津桜?」
「この辺には植わってない」
普段通りの会話、普段通り適当な受け流しをする俺…
「目に見える花粉…」
「や…やめて…」
あまり適当過ぎると、こーやって突っ込まれる。
別にそんな会話が、今日を境に出来なくなる訳ではない。
それぞれ進路は違うけど、家だって遠くないし、休祭日は普通に会える…が…この場所は確かに最後か…
"かりかり"
「…」
何やら壁を指でなぞって…いや、引っ掻いてる?
"かりかり"
「そこ、壁にマーキングしないっ!」
「傷…」
そこまで引っ掻くかっ!?
「なんてコトを…」
「でも、この傷付けたの君だよ?」
壁を引っ掻いていた指がこっちを向いていた。
「…は?」
「掲示板落としたよね?」
「…」
記憶をたぐり寄せる…
「…やった気がする」
何か貼ろうとして、画鋲が入り難かったから、思いっきり叩いたら…って、かなり昔の話だし、傷が付いてたなんて知らん。
「"私がやりました"って、名前書いておく?」
「何故そゆー発想になるっ!?」
相変わらず何を考えているのか判らん…
入り込む日差しの位置が少しずつ移動していく。
それを追うかのように、2人して座る位置を移動していたが、これ以上は締められたドアに阻まれ動けなくなった。
「押さないでください…」
「押してないよ?」
いや、明らかに体重かけて潰しにかかっている、そもそもその手で俺の顔をドアに押し付けてるではないかっ!
やがて日差しも床でなく壁を照らし始める。
どこから迷い込んだのか、1枚の花びらが目前にあった。
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