ArtWorks Library
No.0359「Last Christmas」
世間はクリスマスイブと浮かれている今年は3日間の連休でもあったみたいだ
イブイブなんいう言葉もラジオやテレビは連呼する
バカバカしいやら何やら…
カウンタにはあたししか座っていない
隣は空席
他のテーブルはいくつものカップル達で埋め付くされている
たわいもない会話
別にクリスマスだから出来ないという事でも無い筈
言葉に躍らされているだけよね…
でも去年までは
あたしもそんな部類だったのかもしれない
独りになって初めて判った事
申し訳無かった様な
悔しい様な
複雑な感情が入り交じる
なんでだろう?
店のマスターが言う
「クリスマスなんて昔は無かったんですよ」
さりげなく話し掛けるマスターに振り向いた
「ある人が生まれて始まったんでね、1日ズレてれば違う日がイブになってましたよね」
4ビートのクリスマスソングが流れる店内
周囲のざわめきはもう耳には入らなかった
「始まりなんてどこにあるか判らないんですよ、それが初めての始まりか、終わりの後の始まりか…なんていうのも関係無しにね」
「でも、それは…」
あたしが聞き返そうとした時だった
「いいでしょ?このクリスマスソング、はなやかなジングルベルもいいけど、たまにはこういうのも…」
サックスとピアノ、そしてベースがラインをたどる静かなメロディが店内に響いていた。
新しい生まれを予感して、イブの夜は過ぎてゆく
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