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No.0490「その季節より…」

No.0490[その季節より…] 上からの眺めが青色からオレンジへと変化する…
そろそろ夕方か…
この時期、日が落ちるのも早い、まだ17時にもなってないのに、辺りの街灯が灯り始める。
「はー…」
手にした缶コーヒーの温もりを確かめつつ、大きくため息。いつの間にか息まで白く見えるようになっていたか…
「うー…」
「はー…」
「うぅ~…」
「温かいよな~♪」
「あっちがいい~…」
そう言いながら、夕日とは反対にある店を指差す奴1名…
おしゃれーな外観に、中には温かそうに茶をする観光客の姿がチラホラ…
「そんな金は無い♪」
「うぅ~…缶コーヒー~…」
「これだって今や120円という高級品なんだぞ~、昔は100円だったんだぞ~、歌にもあるぞよ♪」
しかもその高級品を2本である、俺の財布は断末魔の悲鳴を上げたまま、その口を閉じてない…
「たまの休みに、どこに連れてってくれるかと思えば~」
うむ、確かに散歩にずっと付き合わせてしまっていました。
しかも俺はカメラ片手に、あっちフラフラ、こっちにフラフラ…
「まぁ、いい運動になったと思えば♪」
「確かに、いい運動だったわよ~」
一山を2回も上がって降りてれば、それなりの運動量にはなるだろう。
とは言え、俺のように何かしながらなら、それも難とも感じないかもしれないが、ただ付いて歩いてるだけというのは疲れるかな?
「まぁ、この景色に免じて♪」
「なんか見えちゃいけないモノが見えそうだよ…」
うむ、正面は確かに墓地である。
でも、その向こうに日が沈むし、夜景が見える方向もそっちだ。
そして、俺のようにカメラ持ってるのもいれば、同じように缶コーヒー啜ってるのもいる…

「少し寒くなってきた…」
しばらくそこで景色を眺めていたが、やはり日が落ちれば辺りが冷え込むのも早い。
カイロ代わりの缶コーヒーも既に役目を終えていた。
「んじゃ、そろそろ降りて帰…」
「…か」
「か?」
「ちゅー…」
「ここでですか?」
おー、顔を赤くしておる♪
「ちがーう!ちゅーか!」
「はい?」
「ちゅーか、ちゅーか、ちゅーか、ちゅーかー!」
あー…手足バタバタさせながら、何を言ってるかと思えば…
しまった、帰りの電車の乗り口って、そのド真中じゃないか…
「は、反対側に降りようかな~…」
「ちゅーか、ちゅーか、ちゅーか、ちゅーかー!」
うわ、言いながらそっち方向に進み出してる!?
「や、そ、その!俺の財布が断末魔のまま開口状態でー!!」

吹き抜ける風が次の季節の到来を告げる…
ちょっと肌に射す冷たい風、来季の使者…
「つめて…」
それは俺の財布の中に、吹き溜まりを作ってんじゃなかろか?
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