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No.0495「今年こそは、ら・し・く…」
今年は暖冬と言うが…「寒いです…」
暖かいという字が付いていようが付いていまいが、寒いに代わりは無いのである。
それなのに…
「はい?」
「元気なやつだ…」
「何か変なコト考えてない?」
「別に…」
俺なんか寒くて手が出せないというに、こいつは手も足も出している。
「寒くなかと?」
「別に…」
なんかイマイチ機嫌よくないな…何故だろう?
海からはこんなに離れているのに、水しぶきがここまで飛んできてるんじゃないか?と思う位…
「お天気~♪」
「寒い…」
「快晴~♪」
「冷たい…」
「…」
「…」
いや、こういう応対しかしてなきゃ、機嫌も悪くなるだろうて…
「気付いてくれないんだものなー」
「は?何がでしょう?」
「見て判らないかな?」
そう言って、俺の目の前でクルっと回ってみせた。
「…」
「…」
「その下にカイロ?」
”ごす!”
「ぐあ!」
足元のおぼつかない微妙なターンは、そのまま回し蹴りに変わった。
「今年こそはと思ってるのにー」
「何が?」
「う、やっぱ気付いて無い…」
そしてまた回る…そして一歩後退する俺…
「服だよ、服ー!」
「あ?服?」
頭の先から足の先までを目でナメ、再度頭の先に戻る。
「…」
「どう?」
「女の子のコスプレ?」
”どす!”
「ひぎぃ!」
足元のおぼつかない微妙なターンは崩れ、倒れかかった勢いは俺への体当たりに変わった。
「私女の子ー!」
「そうでした…」
あぁ、そうか…何に機嫌が悪いかって、服装に気付いてなかったからか…
なるほど、言われれば珍しく女の子っぽい格好ではないか?
「どうした暴風雨の吹き回しだ?」
「今度はどこを攻撃されたい?」
女の子じゃなかったのか?
「今年から可愛いくするのー!」
「はぁ…」
確かに去年までは動き易い格好とか、そーゆーのが多かったかもしれんな…
「その方が嬉しくない?」
「…かも」
「何故ワンクッションおくの?」
「風邪のせいです」
「はぁ…せっかくおニューにしてきたのに…」
残念と呆れと諦めが同居したような顔をされてます。
とは言え、気付いてなかった訳じゃないんだけど、あえて触れたり喜んだりするのも何だし…いつも通りにしてようと思ってたのだ。
「…が」
「が?」
「タートルねぇ…」
「ちょっと袖長めね♪」
「ワンピねぇ…」
「ちょっと丈短めね♪」
「なのに…」
「なのに?」
「相変わらずズタ袋かよ!?」
こいつの持っている情けないトートのコトだ。
「去年どころか、ここ数年ずっと同じじゃないか?」
「うっ!」
あー…頭にでかい汗の記号が浮かんでいるようだ…
「こ、これ色々入るから…」
「一眼デジカメとパソコンと携帯2台、バッテリその他周辺機器モロモロだろがー」
決して女の子の持ち物ではない、むしろ男の子の持ち物である。
(それも濃ゆい男の子…)
「はうっ!」
「可愛い以前に、その持ち物を女の子っぽくしたまいよ?」
「じゃバッグ買って♪」
「外見じゃなくて中身だー!」
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