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No.530「LastSpring」

No.530[LastSpring] 「ほら、桜さくら♪」
これでもかっ!って程に舞落ちる桜の花びらの中…
「後で掃除すんのがタイヘンなんだよな…」
ボソっと呟く。
「げ、現実だなぁ…」
苦笑いしながらも、その桜吹雪の中をクルクルと舞い…
「わ、ぺぺっ!」
「お饅頭もご一緒にいかがすか?」
「はい?」
「あるいは大福…」
「…」
「…」
そーゆー目で見ないで…
桜舞う校舎、卒業シーズンでもあり、入学シーズンでもある。
しかし、こやつが卒業するとか入学するとか…そーゆー訳ではない。
来年度3年生、ここにはもう1年ご厄介になる身の上である。
「来年…最後か…」
校舎を見上げて言う…
「…です…な…」
同じく見上げてみる。
「あれ?あんなトコに時計あった?」
「あったよ?知らなかった?」
「記憶に無い…」
かく言う自分もここを…
「ねぇ、おとーさん?」
「おとーさん言うな」
「だって」
自分の発言に間違いが無いコトを確信しとる、いや実際そうーなんだけど…
「先生、おとーさんと同じ年」
「…だから言うなっ!」
本当の先生ではないのだけど…訳あってここの授業をお手伝いしていた。
こやつはそこの生徒だ。
「…おとーさん…か…」
そんな自分も、実はここの卒業生…ただし約四半世紀近く前だったりする訳で…
実際、同級の中には高校生の子持ちがいる位だ…だから間違っちゃいないんだけどね…
(個人的には認めたくない、いや是非国会で承認して頂きたい)
そしてこやつは来年が最後…なのだけど、同時にこの学校も最後となる…
諸事情による閉校、来年度は3年生しかいない寂しい校舎となるのか…
お手伝いの合間に校舎内散策したけど、変わったトコも多い反面、全く変わって無いトコも残っていた。
ただし、変わって無いとは言え、やはり色あせてたり、あるいは減ってたり、相応の変化は見せているのも確かだ。
「一番変わったのって制服かねぇ…」
「え?何なに?」
「昔は詰め襟だ」
「女の子も?」
「なぜっ!!?」
それはそれで新たな萌え要素としてだな…
「…コホン」
(おとーさん世代、おとーさん世代、おとーさん世代…)
「?」
「ブレザーだったけど、地味だった…」
「そーなんだ」
「スカート丈は今の3倍位じゃないか?」
「…」
手のひらを水平にして、現在位置と予測位置を行ったり来たりと…
(先端は前屈しないと届かないご様子である)
「…あったかそうだね」
漫画のような大きな汗を滲ませ、違う意味での苦笑いに変わっていた。
更に多くの花びらが舞う。
登っていくもの、円を描くもの、吹き溜まりにたまるもの…
ここを出てった人数と目の前で踊る花びらとでは、どっちが多いんだろうな…
「口元ニヤけてるよ?」
「…気にせんで…」
その花びらの間をすり抜けながらも、共に舞う姿…
「先生、来年も来るの?」
「一応その予定」
「授業覗きに行くよ♪」
「自分のちゃんと受けてなさいっ!」
1年後の今日を、自分はどんな顔して迎えんだろうな…
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