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No.541「Why TopHat」

No.541[Why TopHat] ついこの間まで桜の開花が待ち遠しかった気がする。
しかし、それも咲いてしまえば後は早いモノだ、暖かくなってきたなんて悠長に思う暇も無く、いつの間にか汗ばむ季節となっていた。
そして辺りは、この時期特有のような植物の香りに満たされるようになる。
「暑いよ…」
衣替えなんてのもイベントとしてある訳だが、耐えきれなかった俺は、人様よりも一足早い衣替えを実施していた。
まぁ、会社勤めでないから、いつ実施しても問題無い訳だが…

こんな日差しだとゆーのに、大気が不安定でどーのこーの故、夕方から雨だとか天気予報は言っていた。
聞くところに因れば、日本の下側の方では梅雨入りをしたとかなんとか…ジメってくるイヤな季節の到来もあと僅かかと思うと憂鬱でもある。
「今日じゃない方が良かったかな?」
気晴らしにお出かけしようぜ〜♪と、昨晩あいつにmailしてたが、日を改めた方が良かっただろうか?
なんせ、走り回るのが好きな奴だ、急に雨降りになったら、そこに雨雲を宿したかの様に頬を膨らませるであろう…
そして、その憂さの発散は俺の身体に向けられる、それが常だ…
「…あぁ…日差しが眩しくて涙が止まらないヨ…」

「おまっせ♪」
そんな心配をよそに、背後から元気溌剌な声…
が…
「あれ?」 「…さようなら」
「どっ!どこ行くのよっ!?」
「許してくれーっ!同類に見られたくないっ!」
「どーゆー意味よっ!」
どーにもこーにも、見ての通りだ!
暑いから涼しげな格好は許そう、大気が不安定だから雨具装備も許そう…
「がっ!」
「がが?」
「何故TopHatなんだっ!?」
女性系オシャレ小物でちっこいシルクハットモドキが頭に乗ってるのは見たコトがある。
でもって、そーゆーのはお飾りがゴテゴテしているコトもあるんだが、目の前にあるソレはゴテゴテ小物の域ではなく大物の域に到達してるではないかっ!?
「手品でも披露してくれるんでしょうか?」
「はい?」
違うらしい…
「どこかの宮廷にお呼ばれ…?」
「はい?」
それも違うらしい…
「昨夜mailくれたでしょ?」
「送りました」
隠し芸を用意するような指示や、正装を指示するようなコトは勿論していない。
「だから、TopHatと白タイと…」
「…」
こいつ、また何か観たな…
色々と感化され易い方のようで、読んだ本とか観た映画とか、その後にその気になり易いのである。
お陰で俺は、その元ネタを推測出来るように訓練を…
(気付かないと怒られるからw)
「あ、でもね…」
「エンビ服は無かったって言いたいんですね…」
「うん♪だからレインコート♪」
を腰に巻いて、裾を広げておる…
きっと今現在、こいつの脳内では背景にどこぞの摩天楼が展開してるに違いない。
「なんだ、やっぱり判ってるじゃない」
訓練の賜物、褒めたいよ、自分を…
賜物から推測すると、次は爪も磨いたとか言いそうだが、性として"尖らせたんですね…"と突っ込みそうな気がしたので、追求せず流そうと…
「爪も…」
「尖らせたんですね…」
"しゃきーん"
間一髪、1歩後退した俺の前で、その手が宙を切った…
(結局突っ込んでるじゃねーかっ!)
この調子だと、傘にも何か仕込んでそうだ…いや、絶対、弾とか出そうだぞ?
怪我が増える前に話題を変えておかないと…
「ところで、そんな高い帽子だと、傘が差し難いんじゃないか?」
差せないコトは無いと思うが、持ち上げる腕が疲れそうな気がする。
「だからレインコートなんじゃない」
「…それ滑稽じゃね?」
確かにフード付いてるみたいだけど、頭部だけ異様に盛り上がるから、羽の低いトーテンポールみたいな…
「ほら、こうやって…」
「あー、顔が楽だ…」
「あ、顎を乗せるなっ!」
"ぼす"
「おうっ!!」
その先端が見えなくなる位、腹部に傘を押し付けられた…
(だって高さが丁度いいんだもの…)
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